―　5. 築別炭鉱線(羽幌炭礦鉄道)(2)　―
(羽幌町)






　　　【曙から三毛別川をさかのぼり、羽幌炭鉱へ】


　我々は曙まで戻り、今度は三毛別川上流を目指しました。
　鉄道趣味的に言えば、曙から三毛別川上流とは、羽幌方面から深名線・朱鞠内そして名寄に接続すべく建設の進んだ　国鉄名羽線の名が思い浮かぶのでしょう。国鉄名羽線の羽幌側、曙 から 羽幌炭鉱のあった三毛別へは路盤も何も完成し、名羽線を利用した石炭輸送は行われました。しかし三橋さんは、三毛別に炭鉱跡があることをご存じないとのこと。このことに私は重要なものを感じました。三橋さんにとって、曙は「年一回の遠足で出かける、とても遠いところ」だった。その曙から、三毛別川を延々とさかのぼってやっとたどり着く羽幌炭鉱など、その存在すら目を向けることがなかったはずのものです。確かに、この日の我々は曙から三毛別の羽幌炭鉱跡まで、レンタカーでものの5分でたどり着いた。しかし、曙まで遠足の日に自分たちの足でやっとたどり着いてきた者達にとっては、三毛別はまったく別の世界となります。このあたりの感覚のずれは大きい。私のような炭鉱の時代を知らない者が、少しでも炭鉱の世界を理解するには、ここで述べた"感覚のずれ"の存在をしっかり認識しなければならないと思っています。

　そしてたどり着いた　今となっては無人の三毛別に残る、羽幌炭鉱の巨大ホッパー。


無人の三毛別に残る　羽幌炭鉱の巨大ホッパー



　三橋さんがここにも存在することに驚かれた、羽幌炭鉱の巨大ホッパー。素人目に見て、同じ人たちが作ったよなとわかる、築別炭鉱のものとよく似た 羽幌炭鉱の巨大ホッパー。巨大ホッパーの奥には、運搬立坑、それも羽幌炭砿の社章が残る。


無人の三毛別に残る　羽幌炭鉱の運搬立坑



　Hのマークの内側にレールが置かれた羽幌炭砿の社章。築別炭鉱、羽幌炭鉱、そして上羽幌炭鉱の羽幌三山を統括していた羽幌炭砿。三橋さんの感触は、「あの社章をかたどったバッチは、父も持っていた」。

　三橋さんにとっても私にとっても、大きな発見が出来た三毛別探訪。しばらく三毛別で我々が見た世界を皆様にもご覧頂きたいと思います。


無人の三毛別に残る　羽幌炭鉱の煙突

追加：羽幌炭鉱に佇む小原輝昭　(当日,三橋さん撮影)



無人の三毛別に残る　羽幌炭鉱の炭鉱住宅




　羽幌三山にはこれまでに写真をご覧頂いてきて築別炭鉱、羽幌炭鉱に加え、もう一つヤマがありました。そのヤマは羽幌川沿いの上羽幌炭鉱。石炭輸送の面では、三毛別の羽幌炭鉱と索道で結ばれていた上羽幌炭鉱。三橋さんとお会いした翌日11(水)、覗きに行った上羽幌炭鉱の炭鉱住宅の様子をご覧頂きます。


わずかに人家の残る上羽幌にある　無人となった上羽幌炭鉱の炭鉱住宅




　三橋さんに築別でお会いでき、本当に充実した探訪となった8/10(火)の行程。お仕事の関係で、三橋さんはこの日のうちに札幌まで戻る必要があった為、この日 羽幌町内に宿泊する私とお別れする前の時間調整として、夕方まで羽幌港のベンチでかき氷をつっつきながら、築別の話から世間話に至るまで様々な話で時間を使いました。
　お会いできてよかった。それも築別でお会いできてよかった。お互い、そう感じたと思う。少なくとも私はそう感じました。

　留萌支庁苫前郡羽幌町築別炭鉱。私にとっても大きな縁が出来た街。無人となり、人の気配がなくなっても人が生活した匂いが残り、いや　人がいなくなったことで生まれる不思議な人気(ひとけ)が感じられるようになった街、築別炭鉱。私の今後にも大きな影響を与えるであろう街、そして出来事となりました。



　三橋さんと羽幌港でお別れした私はこの夜、羽幌町の南大通のホテルに宿泊しました。かつての羽幌駅から10分ほど歩いた場所にあるホテル。私はこの夜、この日の出来事すべてに想いを巡らせていました。この8/10の経験は、今後の私に大きな影響を与えるでしょう。

　そんな想いを巡らせながら、沿岸バスターミナルとなった羽幌駅跡を見学した後、バスターミナル近くの欧風家庭料理の店でこの日の夕食とお酒を頂きました。この日起きた出来事を祝福するかのごとく、この店の料理はとても美味しいものでした。


羽幌駅跡、沿岸バスターミナル羽幌


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